投資

激論!たばこ業界は本当に衰退するのか?【岩波慶×Hiro氏】

たばこ産業は今後、本当に衰退するのか?

兼ねてから、疑問に感じていた事がありました。

米国個別株の中で、必ずと言って良いほど優良銘柄に挙げられる「PM(フィリップモリス)」

高配当利回りで、歴史的にも高いリターンをもらたした銘柄である事で知られています。

しかし、近年、先進国では軒並みタバコ産業の市場規模が縮小傾向にある、という情報を良く耳にします。

日本国内でも、タバコ増税→値上げ→買い控え&喫煙者減少の流れや、各自治体の条例による禁煙促進化が進む昨今。

もちろん、「会社事業の売上」と「株式リターン」は別の概念であるという事は理解していますが、

それでも、今後30年以上のスパンで考えると、斜陽産業とまでは言わないものの、

(PMに限らず)タバコ産業全体で不確定要素とリターンが噛み合っていないように、僕には見えてしまいます。

また、タバコはそもそも「生活必需品セクター」の分類ではなく、いわば「嗜好品セクター」として、

お酒に関連する企業等と同列に分類されるべき業種ではないか?という違和感も拭えませんでした。

たとえ愛煙家の人にとっては「生活必需品」に等しくても、全人類の中で、愛煙家の割合が今後減少していく蓋然性を考慮に入れると、

それって人類トータルにとってはやっぱり「嗜好品」じゃないかな、と感じるのです。

そのため、上記2点の理由により、僕はどうしても個別株での長期投資の対象としてはPMを考慮に入れられない(※)部分があります。(※現保有ETF構成銘柄のPM株は受容。)

まぁ、単純に僕が嫌煙家なのでタバコ業界を買い支えたくないという私情も全く無い訳ではないですが・・笑

そこで!今回、その疑問の答えを探るべく、僕がいつも愛読させて頂いている、

ブログ「Grow Rich Slowly シーゲル流米国株投資で億万長者になる!」の管理人であり、長期投資家のHiro氏に、上記の疑問をそのままぶつけてみました!

ちなみにHiro氏2017年1月地点で、全株式資産の9%をPM株で保有されていて、バリバリのPM株推しの方です。

 

Hiro氏の見解1

岩波慶
岩波慶
こんにちは!(かくかくしかじかで・・・)Hiroさんはこの点についてどのようにお考えでしょうか?
hiro氏
hiro氏
非常に考えさせられるご質問をありがとうございます。

私も同じことを考えることはあります。

ですが、やはり株主としての視点としてたばこビジネスは今後も優良だと考えています。

岩波さんもおっしゃってくれていますが、企業の成長と株主リターンはあまり関係はありません。

むしろ低成長な斜陽産業は、その衰退する将来に市場が悲観的になり過ぎて株価が売られ過ぎになる時に多いと考えております。

私は長期で高い株主リターンがあげられる企業の特徴は以下の二つだと考えています。

・事業継続に過大な投資キャッシュが不要で、安定した高いフリーCFを生み出せる

・投資家の過大な期待が生まれていない地味なビジネス

前者は、長期投資の株主リターンの肝とは「複利ベースのリターン」であるので、常に安定したキャッシュを還元してくれる企業である必要があるということです。

後者は説明は不要だと存じますが、過大な期待がのしかからない地味な銘柄は配当再投資の効率が良いからです。

確かに不確定要素はありますが、リスクをとって株式投資というビジネスを行う以上、そのようなビジネスリスク負担は不可避かと考えています。

>単純に僕が嫌煙家なのでタバコ業界を買い支えたくないという私情も全く無い訳ではないですが・・笑

こういう感情はあっていいと思います!

何に価値を感じるかは人それぞれですから。

そもそも投資の目的は投資リターンの極大ではない、とさえ言えることもあると思います。

ちなみに、私も嫌煙家です。PMの株主のくせにw。

リターンどうこうはさておいて、「自分はこういうビジネスに投資したくない!」という感情というか価値観は大事にされた方がいいと思います。

繰り返しですが、価値観は人それぞれで、世の中の見方は人それぞれだからです。

最近アメリカでは話題になった”代替的事実”、”Alternative fact”という概念に私は賛同します。

物理的な現象も、世の中の見方も、企業の評価も多面的なものです。

素晴らしいコメントありがとうございました。

脳が熱くなります。

深夜にこういう熱いコメントに回答すると、脳が活発化して寝不足になります(笑)。

「単純に僕が嫌煙家なのでタバコ業界を買い支えたくないという私情・・」という視点は本当に大事だと思います。

私は私でこのあたりの件について自分の考えがあるのですが、ちょっと紙面不足ですね。

いつか記事にもしたいです。

 

市場の過度な悲観は、投資家にはむしろ好都合

岩波慶
岩波慶
なるほど・・非常に強い説得力を感じます。

確かに、日頃よく我々が目にする「たばこ産業縮小」の情報も、メディアによって投資家の期待が押し下げられる材料となり、

配当再投資を前提にした長期投資家にとってはむしろ好都合、という側面もある訳ですね。

今後も、地球上からタバコそのものの需要が完全に無くならない限り(&PMが倒産しない限り)、PMの理論上の適正株価は常に正の値で存在する。

あくまでも時価がそれを上回るか下回るかの判断の差であって、そもそも市場規模の増減は別概念であり、そのノイズを投資判断に差し挟むべきではない。

PMの売上が今後、仮にどれだけゼロに「漸近」しようとも、ゼロに「ならない」限りそこには株主にとって価値が存在し続ける、という帰結。

そういう意味では、僕が今回提起したような疑問も、投資家の視点でドライに捉えれば、一種のバイアスに過ぎないのかも知れませんね・・。

「代替的事実」という言葉ですが、今、WSJの記事にて初めて知りました。

上記記事の文脈だと、「論理上の瑕疵を指摘され、誤謬を強引に正当化して切り返したこと」を指したようなニュアンスに見受けますが、

イディオムとしての本来の意味に立ち返れば、なるほど、確かに「価値観は人それぞれ」という事なのですね。

 

Hiro氏の見解2

hiro氏
hiro氏
私は、マーケットが衰退、、とまでは言わなくても大きく成長しない地味なビジネスというのは長期投資の一番の狙い目だと思っております。

やはり投資家期待というものは、上げ方向にも下げ方向にも過大に進みがちですので、衰退するように一見思われる業態は長期的に株価が割安に放置されるチャンスが相対的に高いと思っています。

もちろん想定以上に衰退してはダメですけどね。

岩波さんのように、たばこ銘柄はもうダメだろ・・って思う方は多いと思いますが、それが皮肉にもたばこ銘柄の投資リターンを上げることになると思います。

ただ、先のコメントにも記載しましたがたばこは健康を害して嫌いだからたばこ銘柄に投資したくない、というご自身の価値観には従ったほうがいいと思います!

「代替的事実」という単語は素晴らしい!と感動しましたね。

たしかに「論理上の瑕疵を指摘され、誤謬を強引に正当化して切り返したこと」という文脈で出てきた単語ですが、代替的事実こそ真の事実だと思いますね。

同じ景色でも人によって見えている情景は違うものです。

物の見方や、価値観、考え方、何に価値を感じるかは千差万別であり、絶対的な事実なんてないと思っています。

そういう自分の考えをうまく言語化してくれた単語が「代替的事実」です。

おまけトピック~ブログ運営の醍醐味について~

岩波慶
岩波慶
普段何気なくモヤっと感じている事を言語化していく作業はブログの醍醐味ですよね!
hiro氏
hiro氏
昔は何か知っていること、それ自体に価値がありました。

知識に価値がありました。

会計基準を暗記している人は尊敬されました。

1985年にプラザ合意が実施されてドル高が是正されたという事実を知っていることが大事でした。

しかし、グーグルが世界の情報を整理してからすべてが変わりました。

何かを知っていることそのものの価値は一気に失われました。

だってググれば大体のことはわかるんです。

知識そのものに価値はなくなった。

でも逆説的ですが、だからこそ情報発信の付加価値は高まったと思っています。

かつては情報を正しく教えるだけで意義あることでしたが、今はそれが深化したと思っています。

どう深化したかというと、情報発信者独自の切り口や視点、人生観によって情報を「加工」することに付加価値が生じたという点です。

というか、そういう加工をしないと付加価値を生めなくなったとも言えますね。

一見同じことを言っているように見えても、発信者独自の言い回しや視点があれば読者をはっ!思わせることができます。

すべての人にオリジナリティがあります。

みんな異なる人生を歩んでここまで生きてきています。

高学歴だからとか、会計士や弁護士の資格があるからとか、そういうことは一切関係ないですね。

すべての人にその人独自の考え方や価値観、物を見る視点、考える切り口、歴史観があります。

なぜなら、育った環境は絶対に皆違うからです。

それが正しいとか誤っているとか、そういう次元の問題ではないですね。

自分以外の第3者が持っている自分にはない視点で見た風景を知ることができるのが、読み手としてのブログの魅力ですね。

事実とは常に相対的なものだと私は思っています。

代替的事実ですね!

自分が見てるリンゴと岩波さんが見ているリンゴ、同じリンゴでも違った見方をしていることが往々にしてあります。

自分と異なる視点で語っている文章を読むと人生で役に立つ、、というよりは楽しいんですよね、単純に。へ~、確かにそうだな~、なるほど!!って思うと。

たかが文章、されど文章。

文章には人の心を動かす力があると思います。

 

結論まとめ~代替的事実~

身も蓋もない事を言えば、たばこ産業やPM株が今後実際にどうなるかは、誰にも分かりません。

しかし、少なくとも投資家の観点から見れば、市場が過度に悲観的になる事により、今後の投資リターンがむしろ増していく可能性も確かにあります。

また、絶対的な事実がどうかという観点よりも、人それぞれの価値観や捉え方によって生じる「代替的事実」の方が重要だ、という考え方もある訳です。

結局、最後は自分自身の価値観に立ち返り、シンプルに「買う」「買わない」の判断をすれば良いのだ、と改めて感じました。

そのため、僕は「嫌煙家なのでたばこ産業を買い支えたくない」というシンプルな理由で、今後もPMを個別株では買わない方針です。

Hiroさん、とても深く参考になるご意見を頂き、ありがとうございました!