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未だにインフレがあまり実感出来ないのは何故か?
日銀の金融緩和政策に関連する記事は、本ブログでも度々取り上げています。
マイナス金利、マネタリーベース増大、ETFの爆買い、etc、、。
特にETFに関しては、年間6兆円もの規模で買い入れており、東証一部の時価総額合計580兆円のうち、17兆円(約3%)もの株式を保有しています。
ファーストリテイリング(ユニクロ)株の15%以上を保有する大株主が日銀って、ハッキリ言って異常、の一言ですよね。
日銀がこうしてお金をジャブジャブ供給している事態は、ヘリコプターからお金をばら撒く例えで「ヘリマネ」などと言われます。
でも、これだけお金をばら撒いているのに、物価ってそんなに上がってなくない?
そもそも、本当にインフレって起こせてるの?と、僕は最近モヤモヤした疑問を感じていました。
そこで今回も、ブログ「Grow Rich Slowly シーゲル流米国株投資で億万長者になる!」の管理人であり、長期投資家のHiro氏と、熱い議論を交わしました。
Hiro氏の見解1
(※以下、上ブログ記事本文より引用)
やっぱりある程度のインフレって、円滑な経済運営に不可欠なんですね。お金を持ち続ければ物価が上昇して損するよ!っていうマインドが国民に浸透することで、積極的にお金が経済に流通するようになります。
日本に限らず、米国も欧州もQE政策(金利ではなく、資金量をコントロールする政策)を実施してきました。
米国も欧州もそれなりにインフレ率が上がっているのに、日本では一向に物価が上昇する気配はありません。それはなぜなんだろうか?
それは、やっぱり日銀が紙幣を刷っても、それが銀行でストップして市中経済へ回らないからですね。実質的に資金量が増えなくて円の通貨価値が減価しない。
アメリカはリーマンショック後のQE政策で、ヘリマネと言っても言い過ぎではないような大胆な金融緩和政策で、難局を乗り切りました。まあ膨大な国民負担で乗り切っただけですが。
日本では日銀が紙幣を刷って国債を買っても、その資金がなかなか民間経済に出回ってないような気がするんです。で、相変わらずのデフレ経済。インフレなんてほっとんど起こってないですよね。それは、日本国民である私たちが一番よくわかっているはず。
米国ではFRBが民間銀行の資金量を増やすとそれがきちんと民間経済に還元されるけど、日本では日銀が民間銀行の資金量を増やしても、それが銀行で滞留して民間経済に還元されない。
だからこその、日銀のETF買いなんでしょ!って私は思ってます。
私見ですが、日銀のETF買いとはヘリコプター・マネーです、ヘリマネ。株価を支えるってのは、大義名分であって、日銀のETF買いの本質とはインフレ誘導のためのヘリマネだと、私は勝手に解釈しています。
日銀がETFを買うってことは、必ずカウンターパーティとしての売り手が存在するわけですから。その売り手はETFの売却資金で、お酒飲んだり、洋服買ったり、旅行したりして消費するはずです。再投資に回す人もいるでしょうけど。
ETF買いにも公平さに問題があるとは思っています。
日銀のETF買いとは、資本家のみに紙幣を配るヘリマネです。
私はこう解釈しています。そりゃ、年間6兆円もETF買えば日本の株価は上がりますよ。株価なんて所詮、需要と供給が一致した点で決まるだけですから。こんなでっかい買い手がいれば株価は上がるに決まっています。そうして、日本株インデックスを保有している人などの資本家は儲かります。
でも、無から有は生まれません。ただ輪転機を回しただけで、世の中が豊かになるなんてそんな魔法はありませんよ。
日銀のETF買いで株価が上がって豊かになった資本家の富は、どこから生まれているのか。それはすべての日本国民です。
ただ、日銀は資本を持っていない一般庶民をいじめるために、ETF買いをしているわけではありません。
日銀政府の目的は、あくまでも円の流通量増加による円の価値の下落です。
どうせ公平なマネーの配り方なんてないんだからさ、どこかに歪みやねじれを生みながらマネーの量を増やすしかないわけです。
でね。ここで不思議な思いがふつふつと湧き上がってきます。
それは、いやいや実際には日本でインフレなんて起こってないじゃん!ってことです。
これは、どう解釈すべきなんでしょうか??
タイムラグか。いずれ、遅かれ早かれ日本もインフレからは逃れられないという考えがあるでしょう。私は、そう思っています。
謎なんです、個人的に。
ETF買いって、資本家優遇な点が公平さに欠けてダメなところですが、それでも今のインフレ率0%が続くくらいなら、多少の不平等は許容できます、私は。
でも、全然インフレ起きないね~。なんでやろ。もう私ではわかりません。
岩波慶の見解
当記事の命題について、僕が考える1つの見解について、ご意見願えないでしょうか。
まず、物価を決定づける様々な要素のうち、一番重要なものは何だろう?という疑問に対して、シンプルに考えて、それは消費者(大衆)の感情値ではないか?と思うのです。
(価格決定権のイニシアチブを業者側が握っているような一部の業界を除き、)基本的に消費者がお金を積極的に使おうと”感情で”思わない限り、価格競争によるデフレ圧力のパワーは依然として強く、それが外的なインフレ要因のパワーと”つばぜり合い”を展開しているため、インフレがまだ実感値としてあまり感じられていないのではないか、という仮説です。
ここで、消費者の感情値は所得によって決定される側面も当然強いため、社会保険の負担増による実質所得の減少、賃金決定における(労働者と雇用者の間に生ずる)市場原理の働きにより賃金上昇が抑制され、トリクルダウンが起こらない、といった所得減少における「客観的要素」はもちろん否定されるものではないと思います。
しかし、それでも、突き詰めて考えればインフレを引き起こす上での”イニシアチブ”を持っているのは消費者、つまり我々大衆であり、「実際にどれだけお金が積極的に使われているか」というのは、客観的なデータとして見る所得の多寡よりも、本質は消費者一人ひとりの主観的な感情にあるのではないか?と思うのです。
消費税増税、外国人株主への資金移動といった「外的要因」も同じく、それを直接的な要因だと捉えるよりは、むしろ大衆の主観的な感情がインフレを主導していないから、という見方です。
したがって、インフレを今後、実際に加速させていくには、(外的要素も勿論重要ですが)、一番は「消費者(大衆)の感情値」を「内側から」動かしていく、という事が最も重要なのではないでしょうか。
具体策として1つ思いつくのは、国の主導で、あらゆるメディアを通じてガンガン資金を投入し、インフレに肯定的なキャンペーン(「あなたもどんどん豊かになろう!」)を打っていくとか、逆にデフレに否定的なキャンペーン(「このままだとあなたもヤバい!」)を打っていく、などでしょうか。「国全体」ではなく「個人(あなた)」に焦点を当てて訴求していくイメージです。
しかし、ここまで書いておいて何ですが、ここ数年、インフレは既に水面下でじわじわと進行しているようにも思えます。もしかしたら、数年後には当命題は杞憂に終わるかも知れません。
というのも、最近、久しぶりに某牛丼チェーン店で牛丼並を注文した時、350円という価格を見て、「あれ、少し前に食べた時は280円だったけど、値上がりしたのかな」と感じたエピソードがあります。某ハンバーガーチェーンのセットも、ここ数年で50円~100円前後値上がりした実感があります。こうした、いわば「価格決定のボーダーライン」とも呼べる、格安飲食店で実感値として値上がりを感じるという事も、目立たないインフレ進行の証左であるかも知れません。
という事は今後、所得は減り、物価は上がり、「格差の広がるスピード」が目に見えない所でますます「早まり続けて」いるという危惧も覚えます。
これから、私達が思う以上に、超シビアなサバイバル時代に突入していくのかも知れません。
日銀のヘリマネ的なETF購入は、資本家優遇、格差助長という面では、数年後、もしかしたら失策の誹りを免れないかも知れない、という懸念が一瞬頭をよぎりましたが、果たしてこれは邪推なのでしょうか。
Hiro氏の見解2
それにしても、岩波さんのコメントにはいつも驚かされます。
私が何となく心の中でモヤモヤと思っていたことを、うまく言語化してくれているなと思いました。
すべておっしゃる通りだと思います。
結局、私たち消費者がお金を使わないとインフレになりようがないということですよね。
記事の中で、「インフレを引き起こすには、とにかく紙幣を刷ればいい」と言ってしまいましたが、これは間違いだったなと今は思っております。
結局、いくらお金をばら撒いても、それを使う消費欲求がないとお金は経済を回りません、当たり前ですが。
で、その消費欲求を引き上げるために、インフレ期待を押し上げるべきというのも、やはり違うかもな~と今は思っています。
確かにデフレ経済よりかはインフレ経済の方が、人々はお金を使ってくれると思います。
しかし、実際に生活している者の実感として、「あ、やばい、インフレになるから何でもいいからお金使っておこう」とはならないのが現実です。
そりゃ、かつてのドイツやジンバブエ、戦後の日本のような急激なインフレであれば話は別ですが、2%前後のインフレ率であれば、インフレだからお金を使おうとは普通なりませんよね。
インフレ期待を押し上げて、消費を回すというのは机上の空論かもしれません。
じゃあ、どうすればお金が経済を回るのか、それは私も岩波さんのご意見に同意です。
消費者の感情を動かすということですね。
感情を動かして、今まで見向きもしなかった商品やサービスを「買いたい!」と思わせる。
もちろん、その買いたい!と思わせたものが詐欺商品ではなく、本当にその人の人生をより良くするものでなくてはなりませんが。
人は感情で物を買います。感情を揺さぶられて消費します。
人は感情で行動して、論理で正当化する生き物です。
企業も感情で投資意思決定して、ファイナンス理論で正当化する面があります。
人は自分が幸せになるために日々生きているはずで、幸せとは感情の話ですから、人が感情で購買意思決定するのは自然なことです。
人の感情を動かして、購買意欲を高める方法として、岩波さんが仰るような、政府PRもいいですね!
広告は奥が深いですからね。
私は、国民一人一人が”マーケター”になることで、多くの人の感情を動かして消費を増やせるのではと思います。
今は、ネットのおかげで、ブログもあるしYouTubeもあります。
個人が情報発信できる素晴らしい時代です。
趣味や、生き方、家族構成、職業、みんな人それぞれ違います。
一人一人がオリジナルな情報を発信して、世の中にはこんな面白いこと、楽しいことがあるんだよ!って紹介することで、人々の潜在的な需要、というかウォンツが刺激されて、お金が使われる量が増えていくかもしれないなと思います。
需要と供給を媒体することって、とても価値あることだと思います。
アフィリエイトなんて、ネット副業的な位置づけかもしれませんが、とても深い職業だと思います。
人の需要を喚起するには人の感情を抉る必要があって、それはとても難しいことだと思います。
女心がわかって、恋愛が得意な人なんかは、とても向いているんだろうなって思います。
マネーの量って本質ではないかもしれませんね。
そう考えると、日銀が国債買うのも、日銀がETF買うのも、大して違いはないかもしれません。
ヘリコプターから紙幣をばら撒いても、使うことなければ使わないってことか。
日銀のETF買いは、格差助長という面もデメリットなのですが、個人的には上場企業のコーポレートガバナンス的に最悪だなと思います。
物言わぬ株主ですからね。
そんな株主が名だたる大企業の大株主って、諸外国の投資家はどう思っているのかな。
おまけトピック~スケールベースの発想もレガシー化していく~
むしろ、それがもう当たり前になっていくのでしょうね。「老若男女問わず、誰しも1つはブログなり動画チャンネルなり持っている」ぐらいの未来でしょうか。
そういう意味では、僕が先ほど掲示した、政府主体でマスに向けてキャンペーンを打つとか、そうしたスケールベースの発想も、今後はレガシーと化していく宿命なのかも知れませんね。
(岩波さんの政府PRって案を否定する意味ではありません。)
これは私もよく思うのですが、スケールベースで情報発信する意義は薄くなっていますよね。
経済が豊かになって、色んな家族観、人生観、価値観が渦巻いています。
それなりの年になって就職して、結婚して、子供育てて、サラリーマン引退して老後、、っていう人生ストーリーはもはや普通ではないです。
色んな生き方をしている人、色んな価値観を持っている人がいます。
そんな中、テレビででっかく広告しても効果は薄いと思います。
そういうイメージ広告の価値があるのは、トヨタ自動車とかの一部の大企業だけだと思いますね。
それ以外は、しっかりターゲッティングして、ニッチを狙っていくべきだと思います。
そういう意味で、規模が相対的に小さい個人のメディアなどが果たす役割は大きいと思っています。
一人一人の個人が、自分の経験や知識をベースに、世の中の小さな需要を拾い上げていけば、むしろ需要を創っていけば、それが集まれば大きな経済成長になると思っています。
結論まとめ~水面下のインフレ進行と未来~
日銀のヘリマネ的な金融政策により、数字上では増加の一途を辿っている、「円」の流通量。
しかし、僕たちの日々の生活の中では、それほど大きなインフレは実感出来ないようにも思えます。
それでも、ふと入った牛丼屋、ハンバーガー屋で、数十円の値上がりを感じるような、
そんな水面下でのインフレ進行は、今この瞬間にもじわじわと進行しているようです。
とはいえ、インフレを引き起こす上で重要な「鍵」となるのは、消費者、つまり国民一人ひとりの感情値である、と僕は考えます。
そのため、今後の「個人メディア台頭の時代」を見据えると、「これからの」インフレの本質とは、政府や中央銀行が巨大な資本力をもって操作するものというよりも、
僕たち一人ひとりがメディアとなり、発信主体となって、個人の需要を掘り下げ、消費を拡大していくものなのだ、という考え方も、
見方の1つとしては有力なのではないでしょうか。
hiroさん、今回も非常に有意義な意見交換にお時間頂き、ありがとうございました!