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PERは時代遅れなのか?
株式投資の売買判断の上で、個人投資家にとってはポピュラーな指標の「PER」。
もちろんPERだけで全てを判断出来る訳ではないものの、株価の割安度を示す指標として、著者も売買の際は必ずチェックしています。
しかし最近ふと耳にして気になったのが、機関投資家は「PER」をあまり見ず、「EV/EBITDA倍率」を重視する、という情報です。
言葉で発音すると「いーびっとでぃーえー ぶんの いーぶい」という、いかにも小難しそうに聞こえるこの指標は、一体何なのか?
この「EV/EBITDA倍率」という指標について、本記事では「ざっくり」に割り切って、3分で読めるようなるべく簡潔に説明してみます。
EV/EBITDA倍率とは ~超ざっくり説明~
EV/EBITDAは、一言で言うと「その企業を買うのに何期分のキャッシュが必要になるか」を表す指標です。
PERよりも「企業の本質的価値」をより強く反映する指標として、M&Aを含め、実務でも良く使われます。
この値が高いほど割高、低いほど割安という事ですが、適正倍率が業種によって異なるため、一概には言えません。
そのため、同業他社間でのバリュエーションの比較に強い効力を発揮します。
PERとの違い ~設備投資とキャッシュが鍵~
PERとの大きな違いは、PERが「株主利益に帰属する指標」であるのに対して、EV/EBITDAは「BS(バランスシート)の項目にも左右される」という点。
BSの項目というのは、つまり現金と負債(と現金同等物)の事です。
したがって、その事業の「設備投資」や「キャッシュ」によって分母が左右され、値も大きく変わります。
ここで、設備投資が少なく、大きなキャッシュを生み出せるビジネスと言えば、代表的なものは何でしょうか?
https://investorkei.com/archives/16162
そう、タバコビジネスです。(詳しくは上記事をご参照下さい)
PM(フィリップモリス)、MO(アルトリア・グループ)、BTI(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)といった企業群がこれにあたります。
(タバコを含めた包括的な)「消費財」セクターのEV/EBITDAは11.47(※)という値ですが、
タバコ業種のみでは9.24(※)という小さな値になっている事からも、上記の特徴が分かります。(※2017年11月14日集計。出典はStock Analysis on Net。)
反対に、設備投資が大きく、生み出せるキャッシュが少ない業種だと、EV/EBITDAの値も相対的に高くなる傾向があります。
EV/EBITDAの問題点
このように、有用な指標として使われるEV/EBITDAですが、どんな時でも必ず万能という訳ではありません。
企業が意図的に設備投資を水増しする事により、EBITDAの値を操作出来てしまう、という指標の問題点も明らかになっています。
インターネット・バブルの頃、アメリカの通信事業者であるワールドコムがこの指標を不正に利用した過去があります。
そのため、「EBITDAのような会計基準に基づかない指標を企業が公表する際には、会計基準に基づく指標を併記しなければならない」という規定も存在します。
【※補足】「EV」「EBITDA」の計算式
以上、3分でざっくり説明してみましたが、いかがでしょうか?
そろそろ時間が迫って来ましたので、最後に、「EV/EBITDA倍率」の元となる「EV」と「EBITDA」の計算式を以下に示します。
EV=株式時価総額(株価×発行済株式数)+ネット・デット(純有利子負債)
EBITDA = 税引前利益 + 特別損益 + 支払利息 + 減価償却費(有形固定資産償却費と無形固定資産償却費の合計)
本記事では上計算式の詳細は割愛しますが、もし興味がありましたら是非掘り下げてみて下さい!